平成23年度第三次補正予算 正すべきポイント

平成23年度第3次補正予算 正すべきポイント 

平成23年11月2日

自 由 民 主 党

 

1 はじめに

〈これまでのわが党の対応〉

東日本大震災発生直後から、我々は、震災対応に万全を期すため「緊急法整備チーム」や「復興基本法等の検討に関する特命委員会」、「原発事故被害に関する特命委員会」などを設置し、真剣な議論の末、577項目にも及ぶ政策提言を行った。また、本来、法案を矢継ぎ早に提出し施策の迅速な執行を図るべき政府が、あまりにも遅い対応に終始していることから、わが党は、「東日本大震災復興基本法」をはじめ復興関連法案(33本)の早期成立を促し、「ガレキ処理法」や「二重ローン救済法」など議員提案(12本)を積極的に行った。さらに、我々は平成23年度当初予算については、子ども手当をはじめバラマキ4K予算などの計上を理由に反対したが、復旧・復興の関連予算であった第一次補正予算、第二次補正予算については、「復旧・復興を最優先」との考えの下、全面的に協力を行ってきた。我々は、この間、対応の遅い政府・民主党を常にリードしてきたところである。

〈復旧復興の遅れは政府の責任〉

政府の震災対応が、あまりに遅く、その規模があまりに小さいことは、平成23年度第一次補正予算(約4兆円、発災後52日後成立)と第二次補正予算(約2兆円、発災後136日後成立)を見ても明らかである。ガレキ処理や道路・鉄道等の生活インフラの復旧などが遅れ、結局、震災から8ヶ月を迎えようとする今日に至っても、被災者の生活再建、被災地の復興への展望が開けない状況が続いている。

こうした現状を早急に打破するために、我々は、一次補正成立後にも本格的な復旧・復興予算を早期に編成すべきと「震災後の経済戦略に関する特命委員会」を発足させ、7月8日には17兆円規模の第二次補正予算案を提案した。しかし、結果として政府の第二次補正予算は小規模(2兆円)にとどまり、民主党の代表選挙などを経て、我々の提案から遅れること実に4ヶ月、やっと第三次補正予算の提出に至った。被災地の現状がほとんど改善されない大きな原因は、予算の編成・執行が大幅に遅れ、具体的な復旧・復興の道筋が示されないことにあり、政府の責任は極めて大きい。

〈本格復興に向けたわが党の基本姿勢〉

我々は、被災地の早期の復旧復興が第一の政治課題であるとの認識を改めて掲げるとともに、復旧・復興に対しては全面的に協力していくとの姿勢に何らの変化もない。同時に、復興対策の「本質」を見誤らないよう政府を正していく責任を、野党としてしっかりと果たしていくものである。

  

2  歳出面における指摘

〈見えない復興の全体像〉

政府は、復興の基本方針において復旧・復興対策に要する経費を平成27年度末までの5年間の復興集中期間で19兆円程度、32年度末までの10年間で23兆円と見込んでいる。しかし、被災地の宮城県は今後の復興費用を12.8兆円、岩手県は8兆円が必要としていること、さらに東京電力から求償するとしても、除染費用のみでも数兆円とも言われる原発事故への対応などを考えると全く足りる規模ではない。

 今後5年間の復興集中期間を見ても、今年度第一次、第二次、第三次補正予算を合わせて既に15兆円を計上しており、残りの4年間での復興費用は4兆円程度となる。既に来年度予算概算要求で3.5兆円が復旧・復興対策に係る経費とされており、25年度以降分は1兆円以下となってしまう。こういう規模では本格的な復興は到底望み得ない。

〈わが党の積極的な提案〉

我々は上述の通り既に7月8日に17兆円規模の対策を打ち出していたが、政府・民主党は10月に入ってから第三次補正予算案を固めた。我々は直ちにわが党提案のうちどれだけの項目が政府案に組み込まれているのかを検証し、7.1兆円の予算上積み案を打ち返した。

 これに対して、政府・民主党は、そのほとんどが「23年度分については第三次補正予算までの対応で十分に措置されている」と説明し、今年度内の執行には限度があるとの言い逃れに終始している。被災地の実情を考えればさらなる上積みは不可欠であり、政府・民主党の対応はまさに財務官僚の言いなりであり、後に述べる償還期間の問題ともども、まさに掛け声だけの“政治主導”である民主党の限界を露呈した。

「早期の復旧・復興」こそが我々の究極的の目標である。復旧から本格的な復興に向かう大事な時期である今、本格的な復興に弾みをつける施策が求められている。我々は、17兆円の提案を基に、各府省の第三次補正予算案について足らざる項目を積み上げた結果、上述の如く7.1兆円の補正予算の上積みを行うべきであるという結論に至った。その内容は以下の通りである。

 

<上積み分7.1兆円の主な内容>

 A 復旧・復興事業・・・・・・・・・・・・・約1.6兆円

・災害臨時交付金(5,000億円)

・学校等の早期復旧・耐震化の加速(800億円)

・災害復旧の加速化の予算積み増し(7,100億円)

・ヘドロ処理(4,000億円)

B 被災者の生活再建/被災地の事業再生・・・約1.5兆円

・きずな基金創設(3,000億円)

・頑張れ農業・水産業復興基金の創設(6,000億円)

・中小企業の資金繰りの拡充(3,800億円)

C 被災自治体等への支援・・・・・・・・・・約1.6兆円

D 原発事故対応・・・・・・・・・・・・・・約0.8兆円(除染費用を除く)

・原発事故被害への仮払いを含む早急な対応(5,900億円)

E 強靭な国土づくり・・・・・・・・・・・・約0.4兆円

F わが国産業の基盤強化・・・・・・・・・・約1.0兆円

・サプライチェーンの再構築(5,000億円)

G.その他 ・・・・・・・・・・・・・・・・約0.3兆円

(注)計数においては、それぞれ四捨五入により、端数において合計とは合致しないものがある。

 〈真に必要な復興予算を〉

一方で、第三次補正予算案の内容を精査した結果、NPO等地域支援、相談窓口、情報発信など同趣旨の事業が複数の府省庁に計上されているものや、本来の復興事業とその他の事業が混在し、明らかに復旧・復興に関連性のない事項も含まれていることが判明している。今後、予算委員会等の国会審議で厳しく追及していく必要がある。

 

3 歳入面における指摘

「復興債」については、4月29日の民自公の三党合意で復興財源としてその発行が確認されており、その後、「東日本大震災復興基本法」にも明記された。わが党は、7月8日に “17兆円の対策案”を提示した際に、復興債の発行による十分な財源確保を強く主張した。しかし、政府・民主党は、財源のやりくりに汲々とし、我々の提案に耳を貸すこともなく4ヶ月が経過した。政府が、夏の時点で復興債の発行を決断できなかったことが本格的な復興予算編成の遅れになったことは明らかである。やっと提出された第三次補正予算案であるが、歳入面において、大きく3つの問題がある。

〈復興債は長期間で償還を〉

第1は、復興債の償還期限の問題である。そもそも、野田総理の言う「今を生きる世代が連帯して分かち合う」ために償還期限を10年にするという考え方には何の根拠もなく、復興において建設される道路・橋などのインフラは、将来の世代も利用する資産であり、建設国債の考え方を参考にし、それに準ずる長期償還とすべきである。また、長期償還にすることによって、単年度の税負担の軽減が図られることになる。

〈「復興特別会計」の創設を〉

第2は、区分管理の問題である。復興関係の予算については、特別に復興債の発行を予定していることや、その歳出や歳入を国民に分かりやすく示す必要があることから、他の予算と一緒に一般会計に計上せずに、「復興特別会計」を創設し、別途経理することが肝要である。これによって来年度以降の一般会計の膨張も、しっかりと抑制して行く。

〈震災の前からマニフェストは破綻〉

第3は、政府・民主党が、子ども手当などマニフェストが実現できない理由に、復興財源の捻出を挙げていることであるが、これは詭弁そのものである。マニフェストの実行は、大震災発生前の平成23年度当初予算の編成時点(昨年末)ですでに困難となっており、ムダの削減や予算の組替えで捻出できるとしてきた民主党の財源論が、震災前に完全に破綻していたことは明白である。子ども手当や高速道路の無料化の廃止で得られた財源は本来、増発した赤字国債の発行の減額に充てることが筋である。マニフェストを実施できない理由・責任を震災に求めることは事実に反するものであり、被災地の方々に対しても失礼千万である。

国民との契約であるマニフェストの撤回は、重大な公約違反であり、復興対応とは別次元で国会の審議を通じ厳しく追及していく。

 

4 おわりに

被災者の生活は未だ安定せず、冬を間近にし、日ごとに不安が大きくなっている。復旧・復興の予算はこの第三次補正で終わるものではない。来年度予算編成、それ以降の復旧・復興対策にも我々は万全を期していく。

そのためには、フルスペックで機能する「復興庁」を早急に発足させなければならない。提出された政府の『復興庁設置法案』は、東日本大震災復興基本法に沿うものではなく、このような実施機能を十分に備えない復興庁では被災地の期待には全く応えられない。真の復興につながる復興庁の創設を我々は全力で図っていく。

さらに大きな課題は、長引くデフレの状況の下、大震災の発生、さらに急激な円高と日本経済が危機的状況に立たされていることである。我々は、「日本経済全体の回復こそ、被災地の早期の復興につながる」との考えの下、日本全体が受けている震災の影響を最小限にくい止め早期の回復を図るため、金融政策を含め必要な政策を着実に実行していく覚悟である。

我々は被災地の一日も早い復旧・復興、そして日本経済の再生に向け、全力を傾注し邁進することを改めて決意する。