自由民主党 日本の再起のための7つの柱(原案)

自民党は、4月9日の全国政調会長会議を皮切りに、来るべき総選挙に向けた政策パンフレットで取り上げる項目の議論を本格化させました。今後、党内論議を通して、さらに具体化されていきますが、現時点での「7つの大きな柱」の考え方を解説いたします。 

1. 日本の再出発
2. 復興の加速・事前の防災
3. 将来への投資・強い日本の再生
4. 自助を基本とし、共助・公助が補う安心の社会づくり
5. 地方の重視・地域の再生
6. 自立した日本・総合的安全保障
7. 政治・行政改革

【 1.日本の再出発 】

憲法改正 / 地方制度・道州制

● 憲法改正に関しては、サンフランシスコ講和条約から60周年の4月28日に向けて新しい憲法草案を提示するための作業を進めています。わが党は結党以来、自主憲法の制定を提唱しています。次期総選挙においても、当然「改訂憲法草案」の内容を世に問うていきます。

● 「憲法改正案のポイント」は、①国旗・国歌の尊重、②自衛権を明記・自衛隊を自衛軍と位置付けること、③昨年の東日本大震災の発生など現行憲法の想定外の事態が起こっていることを踏まえての緊急事態条項の新設、④憲法改正の発議要件を衆参それぞれの過半数に緩和すること、などです。

● 世界の国々は、時代の要請に即した形で憲法を改正し新たな課題に対応してきています。主要国を見ても、戦後の改正回数は、アメリカ6回、フランス27回、第2次世界大戦で同じく敗戦したイタリアは18回、ドイツに至っては58回も改正を行っています。しかし、日本は戦後一度として改正していません。

● わが国においても「国民投票法」の施行に伴い、「憲法改正案」が国会に提出可能となりました。自民党は、国民の理解を得つつ、「憲法改正案」を国会提出していきます。

● また、国のかたちのあり方として、大都市制度の見直し(都構想と特別区の設置)や道州制についても提起します。

【 2.復興の加速・事前の防災 】 

震災からの復旧・復興の加速 / 事前防災を重視した国土強靭化  

● 被災地の復旧・復興を最大限加速するための方策を提示します。ヒト・カネ・体制の整備、ガレキ処理の加速、被災地の産業復興、生活再建などを盛り込みます。

● 同時に昨年の大震災の教訓を活かして、いつ来てもおかしくない次の大規模災害に対し、「事前防災」の考え方に基づいて予め国土を強靭化し、人的・物的被害を最小化する新しい考え方、そして具体策を国民に提示します。

● 具体策として、主に下記の項目を盛り込む予定です。

【国土強靭化基本法に基づく減災対策など】
・ 国土強靭化基本法の制定による事前防災の制度化
・ 基本法に沿った徹底した事前防災・減災対策(10年間の集中計画)
・ 首都機能の維持・強化、バックアップと行政機能などの分散化対策

【重要インフラの防御と防災・減災インフラの整備など】
・ 行政インフラや通信インフラをはじめとする重要インフラの防御・総合的な管理の実現
・ 災害に強い情報ネットワークの整備と災害時即応能力の向上
・ 道路・鉄道のミッシングリンク解消など交通網整備の推進
・ 航空ネットワークの整備促進
・ 学校、公共施設等の耐震化加速と社会資本の前倒し整備 など

【 3.将来への投資・強い日本の再生 】 

円高・デフレ対策への最優先の取組み / 新しい成長モデル / 将来への投資 / 教育・人材育成 / 科学技術・文化芸術・スポーツ立国 

● わが党は高度経済成長を成し遂げた時代から「経済の自民党」でした。今後、私たちが検討してきたあらゆる政策を総動員し、円高・デフレから早期に脱却して、仕事をつくり、国民の所得を増やしていきます。また、新たな成長モデルを確立して日本の国際競争力を回復します。そのためにまず「バラマキより将来への投資を重視する」ことを宣言します。

● 具体策として、下記の6つを提案します。
1. 円高・デフレからの脱却を最優先の課題として欧米先進国並みの物価目標(2%)を政府・日銀の協定などで定めるとともに、大胆な金融緩和策を断行します。同時に震災復興事業や国土強靱化事業などを起爆剤として民需主導による有効需要の創出を図ります。
2. 円高メリットを活用し、海外優良企業のM&Aや資源獲得等、円高時にしか出来ない海外投資を促進します。
3. 「貿易立国」という従来の経済モデルに加えて、国外での積極的な直接投資も支援する「投資立国」という「双発型の成長エンジン」を持ち、国際環境の変動に強い新たな国家経済モデルを構築して、グローバルな視点でより多くの国富を獲得することを目指します。
4. 日本人・日本企業が世界全体で行う経済活動であるGNI(国民総所得)を最大化します。この目標に向けて世界中で獲得した富を国内に還元して、新たな事業と雇用を生み出す「資本の好循環」を作り出します。
5. 国内的には予算配分を「短期のバラマキ」から技術開発・人材育成など「将来への投資」に転換します。
6. 法人税の大胆な引き下げ(20%台)やインセンティブ税制(研究開発、設備投資、人材育成)を導入するとともに、戦略的国際標準の獲得やエキスパート人材育成に集中的に取り組みます。

● さらに、科学技術・文化芸術・スポーツ立国を目指すことも提起します。

【 4.自助を基本とし、共助・公助が補う安心の社会づくり 】 

持続可能な財政の確立 / 年金 / 医療 / 介護 / 少子化対策・若者対策 / 生活保護の見直し 

●自民党が目指す社会保障は、「自助を基本とし、共助・公助が補う安心の社会づくり」です。

● 民主党政権のように「自助」を飛び越えて、いきなり「公助」を前面に出し「誰でも助けますよ」という社会では、早晩、国は立ち行かなくなってしまいます。現に民主党政権になってからの3年間で、生活保護費は実に25%以上も膨らんでしまっています。

● 私たちの考え方は、まず「自助」が基本です。個々人が国に支えてもらうのではなく、自立した個人が国を構成するという考え方です。私たちの社会保障政策、年金・医療・介護・少子化・若者対策など全ての政策にこの考え方をあてはめていきます。

 「手当より仕事」を基本とした生活保護の見直し
< 見直しの「理念」 >
・ 最後の安全網としての機能は適切に果たすことを前提とした生活保護の抜本的な見直し
・ 平成21年12月25日厚生労働省課長通知「速やかな保護決定」を撤回し、自助・自立を基本に共助・公助が補う生活保護制度に立ち返り、同制度に対する国民の不公平感を解消し、信頼を取り戻す 

< 見直しの「5つの柱」 >
・ 年金とのバランスへの配慮などによる、生活保護給付水準の10%引き下げ
・ 過剰診療の防止などによる医療費扶助の大幅な抑制(自治体による医療機関の指定、重複処方の厳格なチェック、ジェネリック薬の使用義務の法制化など)
・ 食費や被服費などの生活扶助、住宅扶助、教育扶助等を現金給付から現物給付にすることを検討
・ 稼働層の自立促進、公的機関での採用等の就労支援対策(ケースワーカー業務の民間委託、自立時資金のための「凍結貯蓄」の導入、稼働層を対象とした生活保護期間への「有期制」の導入など)
・その他自治体の調査権限の強化と財政圧迫への対応など
見直しの「効果」
・ 上記施策の実施により現在の年間3.7兆円の生活保護予算を大幅削減
 

【 5.地方の重視・地域の再生 】 

地方 / 地域産業・雇用 / 農林水産業 

● 元気な地方があってこその元気な日本です。地方にとって使い勝手の良い大規模な交付金を創設するとともに、地方に思い切って権限・財源を移譲し、それぞれ独自の判断で経済活性化と雇用増に向けた施策を打てるようにします。また、地域のコミュニティを再生し人の絆を大切にする社会をつくるため法整備を行っていきます。

● 中小企業はじめ地域産業に対しては、オールジャパンの体制で支援を行うとともに、企業の地方移転・新規立地に対しても税財政による支援を行っていきます。

(農林水産業)
・ 民主党政権の“農業者戸別所得補償”を廃止し、所得補償予算だけが突出して、農業予算全体が大幅に減額した民主党農政から脱却します。
・ 自民党新農政ビジョンとして「4つの柱」を掲げます。
1. 農業予算総額を政権交代前の水準まで大幅に増額し、政権交代後、大幅削減で致命的な打撃を受けた予算の復活・拡充を図ります。
2. 農業者戸別所得補償制度は名称・考え方を改め、振り替え拡充します。
・ 米の所得補償の「固定部分」(15,000円/10a)については、自民党がかねてより議員立法で実現を目指して来た多面的機能直接支払制度に振り替え拡充します。
・ その結果、水田のみならず、中山間地域であるか平場であるか、何を作るか(作目)を問わず、農地を農地として維持することに対しての直接支払を実現します。(予算総額3,500億円に大幅増)
・ 米の所得補償の「変動部分」については、農家の負担を前提とした価格変動補てん金(ナラシ対策)に振り替えます。(1,000億円)
3. 自民党が既に提案済みの(1)「多面的機能直接支払法」、(2)「担い手総合支援新法」の2法案により安定した農政を展開します。
4. 畜産・酪農対策についても拡充します。
・ 「聖域なき関税撤廃」を前提にするTPP交渉参加には反対です。
・ また、林業や水産業の政策についても遅滞なく、かつ重点的に進めていきます。
 

【 6.自立した日本・総合的安全保障 】 

外交・安全保障 / 資源・環境・エネルギー安全保障 / 食料安全保障

● 民主党によって壊された外交・安全保障の立て直しが急務です。自民党は、日米同盟を基本としつつ、外交・安全保障の分野においても、「自助」の考え方を重視すべきであると考えます。つまり、わが国周辺やアジア太平洋地域の安定のためには、わが国が自らの果たすべき役割を着実に果たしていくことが必要ということです。そのために自衛隊の人員・装備・予算をしっかりと確保していきます。また時代の要請に沿って、国際平和協力などの活動が円滑に行えるように法整備などを進めていきます。

●わが国の主権と領土を守る国内法や組織・機関の整備を進めます。拉致問題の完全解決に全力で取り組みます。

● また、安全保障は軍事的な意味合いに止まりません。国家の戦略として、資源・エネルギー・食料などの総合的な安全保障を構築しなければなりません。私たちは国民に万全な体制を約束していきます。

 【 7.政治・行政改革 】

国民のための「真の行政改革」の推進 / 中央省庁改革 / 公務員制度改革 / 天下り根絶 /

総人件費の抑制
● 民主党は、支持母体である労働組合に手足を縛られて、行政改革が何一つ前に進んでいません。私たちは地方公務員を含む総人件費2割削減などを最優先の政策課題として取り上げます。

● 民主党政権は公務員の新規採用を大幅に抑制する一方、定年後の再雇用を進めるなど将来に対する計画性も感じられない施策を平気で実行に移そうとしています。このような、あまりにも場当たり的な運営を許すわけにはいきません。

● 中央省庁改革、公務員制度改革、天下り根絶なども含め、次の総選挙では「政治・行政改革」について、「改革の実行力」も国民の皆さんに問うていくことになります。