平成23年度第1次補正予算

 

 

平成23年度第1次補正予算 正すべきポイント

                                                     

                                                                                                                平成23年4月26日 
                                                                                                                     自 由 民 主 党

はじめに

 東北地方を襲った巨大地震と津波による大災害は、想像をはるかに超えるものであった。われわれはこの試練を必ずや乗り越え、再び立ち上り前進しなければならない。国難とも言うべき事態に直面し、国民が一致結束して事に当たろうとする時、政治はまさにその役割をはたさねばならない。
 いま政治のなすべきことは、復旧を急ぎ、未来への復興の道筋を明確に示すことである。当面の復旧のための補正予算の早急な成立は喫緊の課題である。
 わが党は、3月31日、取り急ぎ実施すべき対策を「第1次緊急提言」として発表した。4月7日に政府から早速フィードバックがあり、わが党は間髪入れずに4月15日には、さらに「第2次提言」を発表したところである。これらの提言には、極めて詳細な施策・対策が盛り込まれており、補正予算の作成に資するものであると確信している。
 1日も早い補正予算の成立は、与野党の共通した認識である。しかし、震災対応だからとは言え、正すべき点に目をつぶって無条件に賛成することはできない。わが党は責任野党として、予算編成権を持つ政府に対し、正すべき点を明確に指摘していく。

 補正予算に関する具体的な指摘をする前に、政府の対応の拙劣さ、対処の遅さを指摘せざるを得ない。総理のリーダーシップの欠如、指揮命令系統の混乱ぶりなどについて、各方面から、さらには与党・民主党内からさえも辛辣な批判がなされている。また、法律の整備も遅れている。阪神・淡路大震災では16本の法律が成立したが、災害発生後1ヶ月で成立している。今回はまだほとんど成立していない。政府の的確かつ速やかな対応を強く求める。
 以下は、補正予算案に対するわが党の具体的な指摘事項である。

具体的な指摘事項

■財源に関する具体的な指摘

指摘1.子ども手当をはじめ“4K施策”を撤回すべきである。

 わが党は、政府の予算編成に際し一貫して財源のあり方を指摘してきた。特に、子ども手当、高速道路無料化、農業の戸別所得補償、高校授業料無償化のいわゆる“4K施策”、この撤回を強く求めてきたところである。
 今回の補正予算では、子ども手当の見直し(7000円上乗せの凍結)と高速道路無料化社会実験の一時凍結による財源が計上されており、これは自らの政策の間違いを認めたことの証左である。民主党は見直しが必要となったことについて、今回の災害のためであるかのようなことを言っているが、まったくの詭弁である。そもそも財源が不明確だったことに起因しているのであり、この際、“4K施策”の潔い撤回を求める。
 新年度に入ったこともあり、高校授業料無償化などは1次補正の財源としては外さざるを得ない。

指摘2.補正予算の財源に年金財源をあてることは認められない。

 政府案では、基礎年金国庫負担を1/2にするための年金臨時財源2.5兆円を震災対策財源に流用しようとしている。23年度本予算において法改正までして無理やり捻りだした年金臨時財源2.5兆円をまた付け替えるのはあまりにも無節操である。
 年金財源を震災対策に使うのは大変な筋違いであり、年金財源の安定化の観点からも断固反対する。

指摘3.地方に負担をかけるべきではない。

 公共事業直轄負担金(550億円)については、被災自治体の置かれた厳しい環境に鑑み、現段階としては直ちに地方負担を求めるべきではない。

指摘4.ODA予算を削減して財源にすべきではない。

 わが党はいち早く、「被援助国の事情も無視し、世界の期待に背を向ける形でODA予算を短絡的に削減すべきではない」との見解を示している。これを受けて政府・与党は、「2国間協力において相手国に影響を及ぼさないよう配慮し、国際機関向けの拠出金の一時的な減額等により501億円圧縮する」とした。
 そもそも国際機関等への分担金は補正予算で処理されており、今後、計上が予定される予算を、なぜあえて削減するのか。ODA予算の削減による安易な財源確保は、国際社会に誤ったメッセージを送ることになり、決して行うべきでない。

指摘5.「復興再生債(仮称)」を財源にすべきである。

 菅総理の“堅い信念”とも漏れ聞くが、政府が1次補正予算に国債を発行しないことに拘ることは理解しがたい。今後、2次・3次と補正予算が見込まれ、その財源は国債に頼らざるをえないことは明白な事実である。このような状況下で、1次補正の編成において国債発行を拒むのは、パフォーマンス以外の何ものでもない。
 わが党は、従来の国債と区別して管理し、名称も「復興再生債(仮称)」とする国債を発行すべきであると主張してきた。政府・与党も2次補正予算の財源とすることに同意したところであるが、1次補正予算においても、国民に理解を求め、堂々と国債による財源を確保すべきである。

<政府案との財源の違い>

政  府
子ども手当の上積みの見直し
2083億円
高速道路無料化社会実験の
一時凍結
1000億円
高速道路料金割引の見直し
2500億円
農業戸別所得補償
年金臨時財源の活用
2兆4897億円
ODA予算の一部縮減
501億円
公共事業直轄負担金
551億円
周辺地域整備資金の活用
500億円
経済予備費による調整
8100億円
国会議員歳費の削減
22億円
国債発行
     
計 4兆153億円
自民党
6月以降の支給停止、
児童手当の復活
1兆3000億円
完全撤回する
1200億円
削減しない
見直す
1000億円
活用しない
縮減しない
活用しない
同左
500億円
同左
8100億円
同左
22億円
復興再生債の発行
2兆2891億円
(※新たな追加事業6560億円を含む)
計 4兆6713億円

■財政需要に関する具体的な指摘

 わが党が4月15日に発表した「第2次提言」を踏まえ、さらに下記のような災害対策事業を追加すべきであることを指摘する。

指摘1.「就学援助金」を支給すべきである。

 わが党の要請に応え「学校の耐震化」(340億円)が追加されたことは評価する。しかしながら、未だ被災者は生活資金に困窮しており、多くの震災孤児も生じている。このためには、被災児童・生徒に対して、可能な限り早く一定額の現金給付を行うべきである。民間の「あしなが育英会」でも、0歳から大学院生までに「特別一時金」の支給を決定し、未就学児10万円、小中学生20万円、高校生30万円、大学・専門学校・大学院生40万円を支給するとのことである。
 政府としても、500億円規模の基金を早急に創設し、支給すべきである。

指摘2.災害救助関係費等及び災害復旧等公共事業の国庫負担率を10/10負担とすべきである。

 厚生労働関係の災害救助費負担金や災害弔慰金などの国庫負担金を10/10負担にすべきである。また、国土交通関係の災害復旧等公共事業についても、一定額以上は国庫負担率を10/10を基本とし、被災自治体の負担を軽減するべきである。
 また、補正予算と直接の関係はないが、平成23年度公共事業の予算のうち5%を執行留保していることは、マイナスメッセージを発することにしかならない。地域経済やわが国の景気全体への影響が心配されることから、直ちに執行留保を解除すべきである。

指摘3.「電力不足対策」を急ぐべきである。

 原発事故により、この夏の電力不足が心配されている。喫緊のエネルギー需給対策として、自家発電設備の導入補助、業務用ビルへのガス冷房の導入補助、エコポイント活用による省エネ機器の普及などを推進すべきである。

指摘4.被災した中小・小規模企業支援に万全を期すべきである。

 中小企業の支援を行う商工会等の仮設事務所、巡回相談体制(巡回車導入支援等)を早急に整備すべきである。
 また、中堅・中小企業向けの貸工場建設(中小企業基盤整備機構)を進める際、地域経済を支える工場等の復旧を、融資のみならず、補助金で支援すべきである。

指摘5.地方財源を手厚くすべきである。

 このたびの災害で被害を受けた市町村の多くは、阪神・淡路大震災の被災自治体と比べて財政力が弱いことに留意すべきである。
 国の事業の実施に伴い自治体の起債が膨れ上がると、財政が極端に悪化し、復興のための事業の実施が困難になる恐れがある。災害臨時交付金を創設することで、災害復旧事業などに係る自治体の負担を軽減するべきである。
 あわせて、生活支援金の給付や消防基金の上積みなどにも使える地方交付税を大幅に加算することで、被災自治体の財源確保に万全を尽くさなければならない。

<追加すべき事業>

就学援助金の支給 (500億円)
災害救助関係費などの国庫負担率を10/10に (1750億円)
  災害復旧等公共事業などの国庫負担率を10/10に (1200億円)
電力需給対策 (980億円)
中小・小規模企業支援 (900億円)
災害臨時交付金 (1130億円)
消防基金の上積み(地方交付税措置) (100億円)

終わりに

 以上が、政府の補正予算案に対するわが党の考え方である。わが党は、反対のための反対はしない。わが党は、被災地からの声、関係団体からの要請、メールでの一般の方々の声など、多くのご意見を拝聴しながら、もちろん議員間でも真剣に議論を重ねてきた。自信をもって対案としてここに提案する。国会において真摯に議論し、より良い予算となることを期待する。